稲妻

監督 成瀬巳喜男
公開 1952年

成瀬作品の中でも最も好きな作品のうちの1つ。 成瀬作品の林芙美子原作ものは全部いいが、これは特にいい。原作の読後感はけして爽やかとはいえないが、映画としては何かあっけらかんとして清々しさが残る。
この点については、シナリオの力が大きい。勿論、監督の計算もある。
人生の暗く重い影を、登場人物たちの善良で気楽な明るさが上回る設計。
エピソードの個々は真剣に考えれば救いがないけれど、それを深刻にしすぎないバランスの良さ。観客への媚と取る向きもあるかもしれないが、ここに成瀬監督の人間観がある。