にっぽん泥棒物語

監督 山本薩夫 タイトル
公開 1965年

評価の高い昭和中期までの日本映画は、かなりの本数を映画館で観ているが、これは映画館で観ていない作品だった。この作品を初めて観たのは日本映画チャンネルで、文句なく面白かった。今でも時々観たくなる。結局、何年にも渡って、繰り返し観ることになった1本だ。

これは、戦後、お蔵入りになった国鉄関連3大事件のひとつである「松川事件」の証言に立った元窃盗犯をモデルにした物語である。モデルにしたと言っても内容としてはフィクションで、 なおかつコメディっぽく作られている。
この映画を成功に導いた要因の一つとして、方言をリアルに操る役者たちのキャスティングがあげられるだろう。(あんまり面白いんで、方言を真似たくなるんですよ。)
映画の舞台は福島で、福島の人には申し訳ないが、方言が本当に新鮮だった。正直、最初は方言が聞き取りづらく何を言ってるかわかりにくかったが、わかり始めると俳優陣の芸達者さや努力の跡が見て取れて、感動すら覚える。
三国連太郎はもちろん、伊藤雄之助、北林谷栄、江原真二郎、花沢徳衛、加藤嘉、佐久間良子、市原悦子、鈴木瑞穂などの豪華キャストはこの時代ならではだろうけれども、端役の役者たちも見事にハマっていて素晴らしい。素人がいない、と思う。
当然、これだけのものを書いた、シナリオの勝利でもある。

追記:劇中、主人公の儀助が破蔵(はぞう)という言葉を何度も使う。
これは泥棒家業の方が使う業界用語の一つなのだそう。
その他に「のび」「たたき」も調べたので参考までに。
「破蔵」…土蔵を破ること、穴を開け侵入し盗みを働く
「のび」…家宅侵入、侵入窃盗
「たたき」…強盗のこと