越後つついし親不知
監督 今井正
公開 1964年
スカパーで飢餓海峡をやっていたので、三国連太郎について思うところを。
三国連太郎に胡散臭い人物を演じさせたら、右に出るものはない。
純粋さや生真面目さが一転狂気と化した時の人間を(魔が差す時というのか)、何の違和感もなく演じた。やっぱり、三国連太郎にそういう気質に馴染む部分があったとしか思えない。
加山雄三の明るさと比べる意味もないが、対極にあると言えばわかりがいいか。
晩年は、釣りバカのすうさんみたいな、なんとなくおかしみのある役もやっていたけども、もう楽々やってる感じだもんな。それにしても、どんな役も人間的な厚みや背景を感じさせる、存在感のある面白い役者だった、と改めて思う。
「越後つついし親不知」は、日本の陰鬱とした雰囲気をたっぷり含んだ水上勉の原作で、日本映画を嫌悪するタイプの人が最も嫌いそうな作品かもしれない。 小沢昭一と佐久間良子が夫婦役で、小沢昭一もすごくよかった。けれど、これは、三国連太郎と佐久間良子のコンビ作品。 ネタバレになるので書かないが、配役がはまってる。現在では失われつつある日本の原風景もいい。破滅への序章となるエピソードは、長い歴史の中で見渡せば、延々と人類が繰り返してきた珍しくもない過ちの一つだ。見終わった後、ため息。この辛さ、これは罪と罰の話ではなく、人間の業の話。こういう映画の楽しみ方もあるにはある。しんどいけど。
今井正は、説教じみていて、基本真面目だ。それがつまらなさでもあり、良さでもある。