小市民的映画の代表的脇役 織田政雄


風貌といい、セリフまわしといい、まさに庶民派映画にはかかせない役者。
気の弱い優しい人、情けない人、ダメな人、人のいい番頭さんなどやらせたら、もうこの人の右に出る者はいない。
私は織田政雄が画面に出てくるのを、結構楽しみにしてる。体も小さく男前ではない。そして堺駿二みたいな種類の面白さを持つ人でもない。でも、ものすごく重要な役をやってる。
目立たない、さりげない、当たり前のようにそこにいることの難しさ。
ご本人は普通にしてたのかもしれないが、出過ぎてもおかしいし、引っ込みすぎてもおかしい、この微妙なさじ加減。
スクリーンに登場するだけで光り輝くスターもいれば、彼のように脇で支える人もいる。社会(世間)一般で考えたって、スターよりも圧倒的に脇役の方が多いのだ。そして自分でもそれをよくわかってるけど、自分ってものを持ちたいプライドだってある。
映画では、試練に強く立ち向かって行く人を賞賛するパターンも多いけど、試練に負けてしまう人間の弱さに共感する場合だってある。
織田政雄が演じる人は大抵こういう種類の人で、そして、いつだって人間を肯定してる。すっげー役者だなぁ、と思う。そして、こういう役者を輩出できた日本映画の黄金期って、すごいと思わざるを得ない。
全般的に言えることだけど、昔の日本映画には、日本的な美意識とか良識が根底に流れてる。説教臭い、予定調和だと、私も若い時分は嫌っていたけど…、どうでしょうねえ、こういうものがいいと思うようになってきたんだから。